月が障子を白く染める夜。わたしは茶室にひとり座り、抹茶を点てた。湯の音、畳の匂い、袖を伝う湯気――すべてが静かで、すべてがわたしだけのもの。帯を解き、襟を緩め、着物を一枚ずつ肌から離していく。誰に見せるためでもない。ただ月の光に素肌を晒したくなった。裸のまま畳に横たわり、古い文庫本を開く。ページをめくる指先に、夜風がそっと触れた。世界はこんなにも静かで、こんなにも優しい。わたしはこの夜を、最後の一行まで読み尽くすつもりだ。